四季報そよかぜ 2021年7月号

「目標と結果」

脳神経リハビリ北大路病院 事務長 内尾孝経

京都では、4/25(日)3回目の緊急事態宣言が発出され、当初5/11(火)までの期間であったが、感染状況から5/31(月)まで延長され引き続き非日常的生活を強いられることとなりましたが、といっても大分慣れた感もあります。一行に収束の見えない新型コロナ感染症はいつアフターコロナとなるのでしょうか。現状としてワクチン接種が始まりつつあるのが唯一の希望です。

1月に行われたアンケート調査「アフターコロナでやりたいこと」では、第3位「友人との外出」、第2位「外食・会食」、第1位は「国内旅行」でしたが、早く日常的な生活の戻り、旅行にでも行きたいものです。人類は過去からパンデミックに悩まされていますが、グローバル化が進み更にパンデミックが起きるようになりました。しかし、医療の進歩とパンデミック対策の改善により死亡率は徐々に低下しています。

過去のパンデミックによる死者数の上位は、1位「ペスト・黒死病」、2位「天然痘」、3位「スペインかぜ」ですが、今回の新型コロナウイルス感染症は現時点で17位ほどの位置にあるものの現在も進行中であるため、今後順位が上がる可能性が高いので一刻も早い収束を願うばかりです。非日常的な生活をしている今だからこそ、目標と結果、成果を上げる方法とその活用法について考えてみたいと思います。

作家の井上靖氏は、次のような言葉を残しています。「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」と。努力する人は前向きなので、きっと明るい未来を夢見て希望を語り「目標」を立てます。一方怠ける人は、無気力な自分のことは棚に上げ、他のせいにして、周りの環境や時代が悪いと不満を並べ、決してよい「結果」を残すことはないでしょう。

記憶に新しい出来事として、水泳の池江璃花子選手の「努力は必ず報われると思いました」。「あぁ、苦しい時も努力してきて、諦めないで本当によかった」というコメントは、多くの人がその言葉を聞いて、感動したのではないかと思います。競技者として自国開催の五輪を前にして、まさかの白血病発症、競技の前にまず生きるか死ぬかという状態に置かれ、そこから大変なリハビリを経て、五輪代表選手の座を獲得された池江選手の「目標」と「結果」は多くの人に希望と勇気・元気を与えたのではないでしょうか。

希望を語るということは、未来を肯定することです。明日のことは誰もわかりませんが、それが肯定できるということは勇気と元気があるということです。不満を語るということは現在を否定することです。たとえば、「昔はよかった、社会が悪い、仕事が面白くない、自分は何をやってもついていない」など。そのような不満を言っている段階では何も生まれません。人は積極的になればなるほど多くのものを吸収できると思います。自分が消極的になっていると感じたら、「目標」を見直してみることが大切だと思います。

ゲーテは「とにかく、仕事に取りかかれば心が燃え上がるし、続けていれば仕事は完成する」と、述べています。確かに、仕事の「結果」や評価は大切ですが、それを気にしすぎていれは何も前に進みません。仕事に取りかかってみるとゲーテが言うように心が燃えると思いましょう。心が燃えれば仕事もはかどるでしょう。このようにして一つの仕事が完成するのです。しっかりとした「目標」を持って、どんな仕事にも積極的に取り組んでいけば自分の可能性を広げる「結果」を見つけることができ、自己の向上にも繋がっていくものと考えます。

また、前向きな姿勢で仕事に取り組むと時間の使い方が上手くなり、取り組み方次第では時間の経過だけでなく、すべてが相乗効果によってきっとよくなっていきます。たとえば、楽しいことをしていると時間が早く過ぎていくように、逆に苦手なことや、あまり好きでないことをしていると、時間のたつのが遅く感じます。このように心の持ち方一つで、時間の感じ方は変わります。

つまり目の前にある仕事をポジティブに一生懸命に取り組めば、時間の感覚は明らかに変わってきます。そして一生懸命に取り組んだことは、人に必ず伝わります。この積み重ねこそが、仕事をする上で大切なことです。目の前の仕事に全力投球してみると、きっと今までにない「結果」や成果が期待できると思います。
結果や成果を出すには、努力をすることは勿論ですが、いくら努力をしても、なかなか成果が出ないことも多々あります。そのような時に気を付けたいことは、努力していることを楽しいと感じているかということです。
論語に、「これを知るものはこれを好むものに如かず。これを好むものはこれを楽しむものに如かず」という言葉があります。これは「ある物事を理解しているだけの人は、それを好きな人には敵わず、その物事を好きな人でも、それを楽しんでいる人には敵わない」という意味です。
今行っている努力は、楽しい努力でしょうか。嫌々行っていては身に付くものも付きません。どのようなことであれ、成果を上げるためには今、自分が取り組んでいることを「楽しむ」という気持ちが大切です。そのためには、まず笑顔で物事に取り組むことです。そうすれば笑顔が楽しさを呼び込み、どんなことでもきっと楽しむことができ、成果が上がるはずです。

世の中には自分で努力せず、社会や他人に依存し、成果だけを求める人がいますが、そのような人は、決して人から信頼されることはありません。

では、自らの努力で成果を出す人はすべての人から信頼されるでしょうか。人から信頼されるか否かは、努力して得られた成果をどのように活用するかで決まります。成果を自分のためだけに活用する人は、たとえ優秀だとしても、信頼されることはありません。それは誰もが国や社会、周囲の人たちの支えの中で活きているからです。それを知らずに、自分のためだけに成果を活用すれば、いずれ周囲の人と対立し、やがては社会の秩序を乱すことになってしまいます。

そのために自分で得た成果を社会や他人のために活用する人が信頼されるようになります。
国や社会のために力を尽くす。周囲の人を笑顔にするため精進する。それが人から信頼される秘訣です。勿論この成果はお金だけに限りません。専門知識や健康な体も立派な成果です。専門知識を使って人を助けることや、健康な体を使って地域活動に奉仕することも、成果を活用する一つの方法であります。

コロナ禍にあり、孤立感が問題視される現況ではありますが、この時期だからこそ、もう一度自分を見つめなおす時間をつくってみてはいかがでしょう。

 

「表彰されました!!」

この度、清水鴻一郎会長をはじめとする京都私立病院協会からご推薦いただき、厚生労働大臣表彰をいただきました。これもひとえに、長期にわたり私立病院協会の業務に出動をお許し頂いた職員の皆様のおかげであり、心より感謝申し上げます。

今後はこれを励みに、一仁会と地域医療の発展に少しでもお返しできるよう微力を尽くす所存です。
                          理事長 岡田純

 

理事長推薦

第5回 『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 』
                ― オリジナル・サウンドトラック

「日本のロック・フォーク・ポップス名盤」と題して、京都にゆかりの深いアーティストの作品や、そのアーティストに関連のある作品をご紹介しています。

 今回も加藤和彦絡みで、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 』― オリジナル・サウンドトラックをご紹介します。

 『超時空要塞マクロス』(以下「初代マクロス」)は、テレビアニメとして1982年から放送されたロボットアニメです。好評を博したため、放送終了後の84年、劇場作品『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(以下「愛おぼ」)が公開され、その人気は決定的となり、その後シリーズ化されました。「愛おぼ」は「初代マクロス」の後日談ではなく、テレビ版「エヴァンゲリオン」と「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の関係のように、「初代マクロス」のエピソードの設定を大きく変更し再構成した作品です。監督の石黒昇はじめ、スタッフ、キャストはほぼ同じメンバーですが、演出、脚本、音楽、アニメーション技術すべてにおいてクオリティーがアップしており、アニメファンの中でも大変高い人気を誇っています。

 さて、その「愛おぼ」のサントラですが、羽田健太郎によるBGMもさることながら、映画のタイトルにもなっている飯島真理が歌う劇中歌「愛・おぼえていますか」が秀逸です。作曲加藤和彦、作詞安井かずみのゴールデンコンビによる作品で、オリコンチャート最高7位(2回)、6週連続トップ10入りを果たすヒットソングとなりました。しかも「愛・おぼえていますか」は単なる挿入歌ではなく、飯島真理自身が演じたアイドル歌手リン・ミンメイが歌う、ストーリー展開に重要な役割を果たす楽曲なのです。今でこそ、『けいおん!』や『ラブライブ!』のように劇中歌を声優が歌いヒットすることは珍しくなくなりましたが、当時としては初めてのケースであったと思います。そういった意味で加藤和彦はアニソンにおいても、記念碑的作品を世に送り出したと言えるでしょう。

 ちなみに、飯島真理はその後声優としてよりも、シンガーソングライターとして活躍します。プロデューサーに坂本龍一を迎え、83年に発表されたファーストアルバム『Rosé』は全曲自身で作詞作曲しており、非常にクオリティーの高い作品です。是非併せてお聞きください。

医師・音楽療法士 岡田 純

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