麻疹とワクチンについて(四季報2019年4月号掲載)

麻疹(はしか)が流行しています。
国立感染症研究所によると、2019年の第8週までに累計258例が報告されています。通年で、2018年は282例、2017年は189例、2016年は165例、2015年は35例ですので、今年に入ってからの流行の広がりがいかに早いかがお解りいただけると思います。

麻疹の感染経路は?

麻疹の感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染と多彩で、感染力は非常に強く、同じ空間に患者といるだけで感染してしまい、マスクや手洗いでも麻疹ウイルス侵入は防ぐことが出来ません。

麻疹の恐ろしさはそれだけではありません。時に重篤な合併症を引き起こします。

肺炎は約15%、脳炎は約0.2%といわれており、医療が発達した我が国でも致死率は0.1%~0.2%程度とされています。

ワクチンについて

麻疹の予防に最も効果的なのはワクチンです。

現在、我が国では麻疹(measles)風疹(rubella)混合ワクチン(MRワクチン)の形で、1歳代と小学校入学の前年に合計2回接種します。麻疹ワクチンの初回投与を、生後九か月の子供にした場合は約85%の効果が見られ、生後12か月の子供にした場合は約95%の効果がみられ、初回の投与で免疫が得られなかった場合でも、2度目の投与でほぼ全てのヒトに免疫がつくといわれています。

2回打ちが始まったのは2006年とごく最近

ところが、この2回打ちが始まったのは2006年とごく最近のことです。それにはいろいろな理由があります。かつて日本では麻疹(measles)、流行性耳下腺炎(おたふく風邪、mumps)、風疹(rubella)の3種混合でありMMRワクチンが、1988年から1993年まで実施されていました。しかし、ムンプスワクチンによる無菌性髄膜炎という副作用の発生が問題となり、接種中止となってしまいました。

さらに、1998年、自閉症とMMRワクチンとの因果関係を示唆した研究論文が、世界で最も権威ある医学誌の一つとされる「ランセット」に掲載されたことにより、欧米や日本で反ワクチン運動が広がってしまいました。この論文は、当該研究の責任者であった英国のウェイクフィールド医師によるデータの不正操作が明らかになっており、その信頼性は否定され2010年には掲載を取り下げられています。ウェイクフィールド医師も医師免許を剥奪されたのですが、この論文はその後も伝説となり、未だに反ワクチン運動のプロパガンダに使われているのです。

しかし、2001年に推計患者数約27.8万にという大流行を受け、ようやく2006年になり、MMRワクチンからムンプスワクチンを除いたMRワクチンの定期接種が始まりました。その甲斐あり、2015年、世界保健機関は日本を麻疹の「排除状態」にあると認定しました。「排除状態」とは、日本に土着するウイルスによる感染が3年間以上確認されていないという意味です。

現在においても反ワクチン運動は根強い

しかし、現在においても反ワクチン運動は根強く残っています。確かに比較的安全とは言えMRワクチンも副作用が全くないわけではありません。

重大な副作用としては、アナフィラキシーショック(0.1%未満、10万人に1人程度とも)、血小板減少症紫斑病(100万人に1人程度)、急性散在性脳脊髄炎(頻度不明)、脳炎・脳症(100万人に1人未満)、熱性けいれん(0.1%未満、3000人に1人程度とも)が報告されていますが、冒頭にも書いたように麻疹に感染すると致死率は0.1%~0.2%です。

ワクチンを打つメリットが出メリットを上回ることはご理解いただけると思います。お子様には必ず定期接種を受けさせていただくようお願いいたします。

麻疹に限らずワクチンで重篤な副作用が報告されると、その頻度が極めて低くてもあるいは因果関係が不明であっても、マスコミ等でセンセーショナルに報道され、時には有効性についてすら否定されてしまう傾向があります。

一部のワクチン否定本や、マスコミによるセンセーショナルな報道に惑わされることなく、ワクチンのメリットとデメリットを正確にお伝えすることが、我々医療人の務めであると考えています。

医療法人一仁会脳神経リハビリ北大路病院  理事長 岡田 純

アーカイブ