治る認知症?! 慢性硬膜下血腫とは

院長
慢性硬膜下血腫という病名はあまり聞きなれないかもしれませんが、頭をぶつけると後で後遺症が出るとよく聞かれると思います。この世間一般で言われている『頭をぶつけた後の後遺症』というのが、この慢性硬膜下血腫のことと考えられます。
 

  • 慢性硬膜下血腫とその症状

 慢性硬膜下血腫は、急性の頭部外傷ではなく、頭部を打撲してから3週間から3か月ほど経ってから、頭蓋骨と脳の間(正確に言うと硬膜とくも膜の間)に血液が溜まってくる状態です。手足のまひ、頭痛、知能障害、尿失禁、意識障害などの症状が出てきます。これらの症状は全部そろっている場合もありますが、たいていは一つか二つの組み合わせです。8割は頭をぶつけた後に出てきますが、2割は頭をぶつけていないのに慢性硬膜下血腫になっています。また、頭のぶつけかたも交通事故で強く打ったものから、家の柱で軽くぶつけたものまで千差万別です。そして厄介なことに頭をぶつけた直後に、診察や検査をしてもわからないのです。今までに頭をぶつけて病院にかかったことがある方なら、診察が終わって帰り際に「頭部外傷の注意書き」の様な紙をもらわれたかもしれません。これは病院の責任逃れではなく、初診時には全くわからないことが多いので注意をしているのです。逆に頭を強くぶつけても、3か月経過して何も症状がなければまず安心と思っていただいて結構です。

下の図➀の画像は頭部打撲直後の画像と、図②は打撲後2か月後の画像です。打撲直後には出血がないのに、2か月後には出血があります。

図① 頭部打撲直後のMRI画像
図② 頭部打撲後2か月のMRI画像
  • 慢性硬膜下血腫になりやすい人

 慢性硬膜下血腫の発生頻度は年間10万人につき3~4人と言われていますが、70歳以上ではこの2倍以上の頻度があります。また男性に多く、アルコールをよく飲む人、肝臓疾患のある人、血液透析をしている人などにも多いと言われています。

  • 慢性硬膜下血腫の診断

 これは頭部CTやMRI撮影を行えばその場で即、診断がつきます。

  • 慢性硬膜下血腫の治療

 局所麻酔をして頭に小さな穴をあけ、そこから細い管を入れ血腫を洗浄します。非常に簡単な手術で危険性も少なく、一度の手術でほぼ完治します。再発の可能性は10%程度と言われています。よほど放置しない限り生命に関わる事はほとんどありません。

  • 治る認知症「慢性硬膜下血腫」

 認知症はいまだに良い治療法がなく、家族の方もあきらめているケースが多いと思います。実際認知症は治らないことが多いのですが、この「慢性硬膜下血腫」は数少ない治る認知症の一つです。最初に書いたように慢性硬膜下血腫のうち2割は頭をぶつけていないのです。それなのにいつのまにか血腫が溜まり、認知症状が出ている場合があります。頭をぶつけていない場合でも「物忘れ」と片付けてしまわないで一度は脳神経外科か脳神経内科でCTやMRIを撮影されることをお勧めします。

脳神経外科医 岡田 達也 

脳神経外科 脳神経内科 Q&A①

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